昨年末からの抑うつ的な気持ちを長らく引きずってしまって、年明けに少し写真を撮ったきりで、1月、2月とほとんどカメラに触れない日々が続いていた。メインのカメラはNikon D5だが、とても気軽に持ち歩けるような大きさ重さではなく、サブで使っていたDfでもレンズのサイズは変わらないので、仕事場に持って出るにはやや大きい。そんな時にSONYのα7RⅢが発売された。
 評判の良い高画素のセンサーに小型軽量のボディである。初代の7Rを購入した数年前には、レンズ・ラインナップが今ひとつだったことや、細々とした操作系の使い勝手の悪さ、「防塵防滴に配慮」とうたっているにも関わらず、大雪の日に使っていて動かなくなってしまったこと、そして何よりもあの甲高いシャッター音がどうしても好きになれずに、早々に手ばなしてしまったが、あちこちのレビューを見ると、今回の3代目は、シャッターも含めてずいぶん改善された様だ。
 さらに背中を押してくれたのが、前回、SONY一式を処分したあとに出たZeissのLoxia 2/35というレンズ。Biogonという対称型のレンズ構成は歪曲が少なく高性能で知られているが、後玉が飛び出しているので、ミラーのある一眼レフでは使えないという、ミラーレスシステムならではのレンズである。小さくて軽いマニュアルフォーカスのレンズだが、このレンズの絞り開放の作例写真を見て、そのややクラシカルなやわらかいボケ具合にすっかりやられてしまった。
 ここまで来てしまえば、あとは購入に向かってまっしぐらというのが、「カメラ・レンズ沼の住人」の正しいあり方というもの。数日後には、某家電量販店の展示品を触りに行って、初代よりはボディの剛性感が高まり、シャッターの感触が改善したことを確認した。それから「アダプター経由で現行のニコンレンズが使えるから」「うつうつとした気分もきっと良くなると思う」「このBiogonというレンズが素晴らしいんだよ」などと家人を説得して、Loxia 2/35とともに自宅にお迎えした次第だ。
 お迎えした翌日には、いつもの百花園での試し撮り。春になって顔を出し始めたふきのとうを、絞り開放、ほぼ最短撮影距離で撮影して見ると、合焦面はきりりとシャープに、背景は輪郭をしっかり残しながらやわらかくボケて良い感じである。さっそく仕事鞄に入れて持ち歩き、この数ヶ月の間のうつうつした気持ちはどこに行ってしまったのかと思うほど、撮影に対して積極的に動いて活動的になった。まさかうつに対してカメラの処方が効くとは思わず、われながら現金なものだと呆れてしまうが、まあ、そんなこともあるものなのだろう。
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